クリスマスイブだというのに
失敗をしてしまった。
クリスマスイブだというのをすっかり忘れてしまい、恋人どおしの取り込み中に野暮な電話を掛けてしまったのだ。
それというのも、長い話になるがこんなメールが来たからなのだ。
その日、僕は倉敷の方の病院へお見舞いに行っていた。ちょうど12時前だったろうか。
電話をマナーモードにし、カバンの中に放り込んでいた。
3時頃、病院を出る車の中でメールを発見。
あの、見た目は良いのだが、人見知りする草食系男子「ちーくん」からである。
12:55の発信になっていた。こりゃ済まないと思って中身をみると、オイオイである。
「倉敷で、しゃれたランチを食べさせる店を知りませんか。急いでいます。・・・・・」
そりゃ、1時前に昼食にありついていないとすれば腹も減っているだろうよ。
そういえば、忘年会の時、彼女ができたと言っていたなあと思いだした。(まだ、クリスマスイブだというのは忘れていた)
そうか、この三連休にデートなんだなと予想はつく。
そして、ランチの場所が決まらなくて、相当あせって、僕の所にメールをして来たのだろう。
「返事が3時になって済まん。しゃれた店なら、美観地区へいけばイタリアンからフレンチ、和食と並んでいるだろう」
「デートの下調べもせず、行き当たりばったりなど100年早いわ」
と、返事を出しておいた。だいたい ちーくんは倉敷に住んでるはずなのだ、相当あがっていたのだろうか?
デートの下調べと言えば、かつて「オリーブ」というしゃれた喫茶店(カフェと純喫茶の中間くらいかな)でよくお茶をした。
駐車場が広くて、小物がおしゃれで、コーヒーが美味しかった。
季節の良い日はテラスでお茶をするのもなかなかしゃれている。
ちょうど帰り道である。
下見がてらにちょっと寄ってみようと思い立った。
しかしなあ、あの店はアベックばかりで、男一人ではどうも具合が悪い。
そういえば、「のの」の家が交差点1つで近くだと思いたった。
クリスマスイブだと知っていたら決して電話などしなかったのだが、電話をしたら、留守番電話になった瞬間繋がった。
「今、いいか」「大丈夫、いいけど」
「暇にしてないか?」随分、失礼な言い方である。
「ん?先の予定はあるけど・・・むにゃ、むにゃ」なんだか様子が変だ。
「なんだ、おうちじゃないんかい?」「おうち、普通のおうち」ますます変である。
後ろで声が聞こえる。はっと思い当った。「タカヒロんち」「うん、タカヒロの普通のおうち」まったく、いつもと違ってしどろもどろで女の子をやってやがる。
「そうか、野暮な電話を掛けたな、こっちは大した用事じゃないんだ、済まなかった」そう言ってさっさと電話を切った。
外は寒い、冷たい風がビュービュー吹いているというのに
「のの」は自転車こいで、「タカヒロ」のうちまで行ったのだ。まったく恋の力はすごいぜと思った瞬間、クリスマスイブだと思い出した。まったくもう。
今日は、どこかで「クリスマスパーティ」だとごまかして、イブのデートを楽しむのだろう。ま、それもいい。
ちーくんのおかげで「オリーブ」を思い出し、野暮な電話をしちまった。
それにしてもちーくんもイブにデートなんざ、やるじゃないか。
え、僕? イブを忘れていたくらいだぜ。今日はどうにもならんさ。
君のクリスマスイブはどうだった?