妻の家出

僕は夜中の11時半に映画館に妻を迎えに行っていた。
幸せの黄色いハンカチのような感動もなく、妻は颯爽と映画館を出てきた。
深夜なのだから、車は飛ばさないようにと注意をし、ブラックコーヒーの缶を2本、買った。
お昼からずっと映画を見ていたらしい。


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朝、10時を過ぎて、僕は大掃除の為に、100円ショップと電気屋とコンビニに出かけた。
その前も、妻とお袋は何かしら言い合いをしていた。
他愛もない、冷蔵庫の使い方だの、ああ言っただ、こう言っただの、言ってないだのという
よくある嫁舅の問題である。





僕が、帰って見ると妻の車がない。ま、昼前だし、買い物でも行ったのであろうと気にもしなかった。
やっと自分の部屋を片する気になったのに、一気にやってしまおうと、雑巾と掃除機を持って2階に部屋に上がる。
お袋は憮然とソファでテレビを見ている。

主に、寝室としてしか使っていないので、大したものはない。
しかし、ベッド周りに本が散乱し、いかにも見苦しい。100円ショップで、ブックエンドとか小物を片付けるモノを買ってきたのだ。




しかし、もう12時を過ぎているのに「ごはん」だという声も聞こえない。
お袋に尋ねると「出て行った」の一言である。
何があったのか、わからない。話そうとしないのである。






肝心の息子はその間、2重跳び700回に挑戦していたというし、なんなんだ700回っていうのは、えらく半端な。そして役立たずが。
(ま、親父はその間、自分の部屋の大掃除の問題を考えていたのだから同じようなもんだが)








妻の携帯は鳴るのだが、出ようとしない。


僕と息子はお昼はカップ麺をすすり、夜は息子がサラダというただ、野菜とハムを厚切りしたものと僕がセブンで買ってきた弁当を食べる。
7時過ぎ、僕の携帯が鳴った。
妻である。



8:50からの映画を見るから、それから帰るという。「帰っていいのなら」と付け加えて。
勿論、僕は待っていると伝えた。




早速、調べてみる。8:50からの映画は「素敵な金縛り」であり、終了は11:25である。
ま、迎えに行ってやるか。
理由は未だにわからんが、よほど頭にきたのだろう。
それで、コミカルな映画を選ぶ感覚は僕にはよくわからんが。




妻には悪いが、少し僕はこのドキドキ感を楽しんでいた節がある。
連絡がないのも、あまり気にならなかった。
最期には、どうにか、なるのだと思っていたのかもしれない。


まあ、ともかく、女のケンカは面倒である。(全国の女性を敵に回したか?)