田沢湖一周

翌日僕は7時に起き、朝風呂に入る。
どことなく、体中からイオウの臭いがするのは気のせいか?
また、誰もいない。
この3連休の稼ぎ時に、こうも客がいなくて大丈夫かと思う。
ゆったり、温まったところで、さあ、朝飯である。

生卵がついている。久しぶりに「卵掛けご飯」して食べる。
隣の一人食いの中年のおっさんに声を掛け、一緒に食べる。
声を掛けるなど朝飯前である、旅の恥はかき捨てというではないか。



さて、バスの時間まで2時間近くある。
チェックアウトは伸ばしていいと言われ、金とキーだけ返して
後の時間はは残りの「ガラスの仮面」の続きである。
何故、「紫のバラの人」が誰だかわからないのか?マヤのばか。



お世話になった人々に手を振って、風雨の中をバス停に向かう。
もう2分以上遅れているぞ。
僕は神経質になりすぎているのかもしれない。


田沢湖畔のターミナルで一周バスに乗り換える。
観光案内がスピーカーから流れる。
それにしても、雨が上がって良かった、良かった。


バスを待つ間に仲良くなった、神奈川来たという親娘ずれと仲良くバスに乗る。
僕は仲良くなるのが少し得意だ。まあ、善良そうな風体だからな(と自負している)



田沢湖は白波が立ち、曇っていたが、そのマリンブルーの青さは感じられた。
さすが、日本で一番深い湖である。



メインの観光地「竜子姫の像」と祠(その神社?)である。
竜子は自分の美しさを保つため神に祈り、満願の日に、泉の水を飲み干して、田沢湖ができたという。
あな、女の美しさの執念とは恐ろしいものよ。




祠も観に行ったら、おみくじやお守りを売っていた。
奥に、竜子のような美人の巫女さんでもいるのかと覗き込んだら、エプロンをかけたおばさんであった。





一周回って田沢湖駅が終点である。


13時過ぎの「こまち」を予約してあったからあまり時間がない。
しかし、駅には食堂らしいものがない。2階か?
座って、観光用のチラシを配っている暇そうなお姉さんがいる。
彼女に聞いてみた。
「食堂はないんです。駅の周りに、蕎麦屋とか何軒かありますけど」
「サンドイッチで売ってるとこはないかい?」
「奥にキオスクがありますが・・・あるかどうか」なんか頼りないないなあ。

お礼を言ってキオスクを目指す。
あった、あった、最期の1個が。サンドイッチとミルクティを買い、さっさと待合室で食べる。
そうすると、20分くらい時間が余る。



煙草を1本、外で吸った後、彼女の(さっきのビラ配りのお嬢さんだ)素性が知りたい。
相変わらず暇そうである。積極的にビラを渡すということはないらしい。

「君はJRの職員さん?」
唐突に聞いてみる。
「いえ、役場の、いえ、市役所の職員です」
「何してんの?」(ほんの時間つぶしだ、許せ)
「秋田の文化祭のパンフレットの案内です」
「でも、見てたら、さっきから誰も来ないじゃないか?」

少し困った顔をして「私、今日が当番で初めてなんです。それに文化祭今日までなんですよ。もう案内する行事もなくて・・・・」
休日出勤手当がついて、座っているだけでいいなら、らくちんじゃないか。とふと思ったがもちろん言わなかった。



ああ、お時間を取らせたね。今度は文化祭の時にまた来るよ(さて、それは10年後か?どうせ僕は死んでいる)



そして僕はこまちの人となる。


東京編が残ってしまった、それはまた明日。